過剰運動症候群のリハビリ。活動量の調整。痛みが取れにくい。
※長めの記事です。必ずしも「身体が柔らかい=良いこと」とは言えないという意見を書いています。
ちょっとした昔話を。
僕は体力テストの長座体前屈、いわゆる「柔軟性」の項目は中学1年生から高校3年生まで毎年満点でした。シャトルランが苦手なだけで、筋力、筋持久力などの項目も決して悪くはありませんでした。「身体が柔らかいと怪我しない」というイメージありませんか?僕もそう思っていたんです。
しかし中学、高校と所属していたバレーボール部では怪我が耐えませんでした。ドジっ子みたいな怪我も含めると頭の先から足の先まで痛めていない関節のほうが少ないくらいです。
格闘技ブームの影響もあり、大学ではボクシング部🥊に所属していました。その時も肩、肘、手首には慢性的な痛みがありました。
社会人になってからは筋トレ、マラソンなどを行っているのですが怪我ばかり。過去記事でも述べています。
関節痛を生じやすい原因は色々と考えられますが、その1つとして「過剰運動症候群」があることを知りました。
宇多田ヒカルさんが公表して少しだけ話題になりました。ほとんどの方は知らないと思いますが、慢性的な痛みに悩まされている方は思い当たる節があるかもしれません。
外来リハビリで「これっぽい」慢性的な関節痛を何人か担当している。とにかく大変。関節はある程度「硬い」ほうが良いと思った https://t.co/Wkir2Ms5Fi
— ホソダケンシロウ (@DoraTheMute) 2019年5月29日
過剰運動症候群とは?
過剰運動<hypermobility>症候群(ICD-9 分類728.5 ICD-10 分類 M35.7)は、全身にわたる複数の関節に過可動を来す症候群である。家族で集積する場合もあり、結合組織に関わる複数の原因による先天異常、遺伝性疾患と考えられているが詳細は不明である。
難病情報センターHPより引用
難病情報センター | 整形外科疾患分野 過剰運動<hypermobility>症候群類縁疾患(平成22年度)
つまり先天的に関節が柔らかすぎる(ゆるい)ということです。宇多田ヒカルさんの場合は運動やライブの後に痛みが出やすいようです。関節が柔らかすぎると運動の際に摩擦ストレス、剪断(ズレる)ストレスがかかり、炎症症状が出やすいと思われます。勘違いされがちですが「過剰運動=オーバートレーニング」ではありません。
外来リハビリでも「これっぽい」症例を担当することがあります。「数か所の関節痛に悩まされ、身体が非常に柔らかい」という特徴があります。
※医師から確定診断を受けたわけではないので「これっぽい」と表現しています
身体が柔らかい=怪我しにくいというイメージ
冒頭でも述べた通り、運動前にストレッチする人は多いですよね。医療者、スポーツ関係、一般の方々でも概ね同意を得られると思います。
「身体が柔らかすぎて痛みが出ているのかもしれません」と言うと、大抵は
「(・Д・)ポカーン」
とされます。僕も働きはじめはそう思っていました。
以前のブログで「腰痛」について書きました。その中で立位体前屈で地面に手のひらが付くくらい柔らかいのに、慢性的な腰痛に悩まされているという人が何人かいました。
「身体は昔から柔らかいんですけどね〜」と言われます。こういった方々は特別ストレッチをしているわけではありません。
色々と調べていると「腰椎前屈可動域が大きいと腰痛を生じやすい」という研究にたどり着きました。
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動きすぎてしまうのも良くないんだな。と思いつつ他の関節はどうなんだろう?と調べたら
運動機能障害症候群のマネジメント理学療法評価・MSIアプローチ・ADL指導
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こちらにも「関節は動きすぎてしまうから痛くなる」と書かれていました。言われてみると背骨でも頚椎、腰椎は痛みが出やすいのに対して胸椎はそうでもない…肋骨に囲まれて安定しているからだろうか。
さらに骨折や靭帯損傷などで関節が不安定になった場合も痛みや変形を生じやすいと言われています。いわゆる古傷です。
ここから過剰運動症候群(っぽい症状)の対策について
※僕は医師ではないので診断はできません。あくまで個人的な意見なので参考までに
関節が柔らかい人のチェックポイントとして
・立位体前屈で手のひらが地面につく
・肘、膝を伸ばしきると反ってしまう
・肩が凝りやすい
※不安的な関節を支えるために筋肉が緊張していると思われる
この3つがあり、重労働、スポーツ、トレーニング後に頻繁に関節痛を生じた経験のある人向けです。
おそらく女性に多いです。
大きな負荷をかけず、関節運動を小さくする
日常生活レベルでは
・重い荷物を持って長時間歩かない
・長時間の肉体労働は避ける
おそらく介護職、建設業などは避けたほうが良いかも。
スポーツ選手、筋トレでは
・予防として装具を使う
サポーターやトレーニングギアなどを使って関節運動を止めると良い。
・関節運動を小さくする
ベンチプレス、スクワットなどは曲げ切らない、伸ばし切らないようにする。なおかつ無理な重量を扱わないことをおすすめします。
・動的ストレッチ
いわゆるストレッチは行わずにウォーミングアップだけでも良いかも。これから行う動作を軽負荷でゆっくりと再現するように。ヨガなども無理に行わないほうが良い。
リハビリでは
・上記の生活指導
・硬くなっている筋肉に対してマッサージ
・動的ストレッチ(筋緊張の緩和)
・狭い可動域での筋トレ
を行っています。あまり無理をさせすぎないようにします。リハビリを行っても痛みは非常に取れにくいです。緩和はできますが、生涯付き合っていくしかない体質だと思います。
まだまだ分からないことも多い疾患です。潜在的な患者もいるのではないかと思います。
理学療法士としては「関節が柔らかい(ゆるい)ため痛みが出ている可能性がある」という情報を持っていることが重要。痛みの評価の幅が広がります。
あとは
ダイエットしましょう
普通の人よりも厳格な体重コントロールが必要だと思っています。
※あくまで個人的な意見なので科学的な根拠はありません。新しい情報を得たら追記します。