腰痛の原因と生活指導⑩理学療法士の腰痛と対処法
「腰痛持ちの理学療法士は格好悪いよ!」
これ、大学の授業で言われました。
理学療法士の教育課程では決まって「ボディメカニクス(体の使い方)」に関する授業があります。
具体的には自分自身と対象者(患者)がお互いに負担がかからないような動作を習得することです。
例えば
・寝返り、起き上がり、ベッドから車いすへの移乗などの介助方法
・歩行や運動の介助方法
・対象者の腕や脚を持ち上げる方法
などです。てこの原理を使い、関節や筋肉に負荷をかけない方法です。
さらに「他職種(医療に限らず)や患者の家族にも効率の良い動作を指導できる」だけの熟練したスキルが必要になります。
冒頭の台詞は
「身体に負担がかからない、効率の良い動作を指導するべき理学療法士が腰痛とは何事か!」ということですね。重要なので2回言いました。
しかし…
理学療法士は腰痛になりやすい
働き始めてから腰痛を経験することが多いようです。
例えば新人理学療法士が「最近腰が痛くて…」と言ったら
先輩理学療法士「俺も若い頃は腰痛に悩まされたもんだ。そのうち慣れるよ🤚(肩をポンっ)」
これは避けたいですよね。
女性はさらにリスク高いです。理学療法士も女性が増えていますが保健衛生業というのは女性が重労働をしなければならないという珍しい業界なんですよね。女性の耐久力は男性の3分の2しかないと言われています。
理学療法士協会でも腰痛対策に力を入れている
国民の皆さまの健康に役立つ「ハンドブック」
シリーズ3が腰痛です。うちの職場にもおいてあります。
こんなことが書かれています。
腰痛の発生が多い仕事として重量物の上げ下ろし、長時間の立ち・座 り作業、介護、看護、車両を運転する仕事が挙げられます。
厚生労働省「平成28年業務上疾病発生状況(業種別・疾病別)」データより
医療職のリスク高い💦腰痛発生率90%だったら日本国民の平均よりも多いですからね。
腰痛の予防と対策に関しては非常に分かりやすく書かれているのですが
「あとは自分自身で何とかしてね🤚」
というスタンスなんです。
僕自身も社会人1〜3年目に腰痛に悩まされていました
中学校、高校はバレーボール部🏐に所属していました。その時も多少の腰痛はあったのですが、長引くレベルではありませんでした。
大学時代は一日中パチンコ屋、雀荘にいても腰痛にならなかったんです。
社会人になってから腰痛になりました。3年くらいは病院で湿布や痛み止めを処方してもらいました。当然腰痛体操、ストレッチ、筋力トレーニングも行っていました。むしろ同世代平均よりも筋力と柔軟性は高かったです。
症状としては長時間座っていること苦痛だったというのが最も大きいです。リハビリ業務も座りながら行う時は腰部の重苦しい痛みを我慢していることが多かったです。
なぜ自分自身が腰痛になっているのか分からなくて不安になりました
「なぜ腰痛になってしまったのだろう」
「体操などをやってみたけど根本的に良くならない」
同じような新人理学療法士も多いかもしれません。
※腰痛持ちの医療職の方がいればこちらのアカウントへご相談ください。↓
ストレス、体調不良、ダイエットが重なって4日目の便秘。身体は正直だ
— ホソダケンシロウ (@DoraTheMute) 2019年1月29日
社会人3年目にさらなる心身の不調が出ました。
それが
胃が痛くなって痛み止めが飲めなくなり、湿布で赤い発疹が出るようになった
薬の副作用が強く出てしまい、使えなくなってしまいました。厄年(男性は数えで25歳)のあたりで大きく体質が変わりました。侮れない。この時に決意しました。
自分の腰痛の原因を分析し、根本的な解決法を考えてみようと。
いくつかの仮説を立てて検証し、対策を立てて効果が出るかどうか試しました。効果のあったものをいくつか紹介します。
減量:大学4年の臨床実習から国家試験までに15kg太りました
お菓子、ジャンクフードを食べまくっていました。実習指導者の先生にはとても良くしていただいたのですが、ストレス溜まります。
70kg→85kgです。さらに社会人になって88kgまで増量しました。和服とちゃんこ鍋の似合う男になっていました🍲
現在は70kg程度をキープしています。
これだけで腰痛は3/10くらいになりました。椎間板を押しつぶす刺激が減るため、根本的な解決法の1つと言えます。
大学時代に激太りした人は1年目に思い切ってダイエットに取り組むのもアリかと。
仕事量を減らす:残業代で給料を稼ごうとして労働時間が長くなった
少しでも手取りを多くしたくて患者数を増やしたり、積極的に残業をしました。新卒でも手取り25万以上だったと思います。小さい職場だと役職者が少なく労働分配率も高くしやすいので、給料が良かったです。小規模な訪問リハビリとかも給料良いです。その代わり、トラブルには弱いです。
※別記事で詳しく述べます
腰にかかる負担とは関係なく、単純に疲れていると腰痛を感じやすくなります。時間外労働を増やして稼ぐというのは基本的におすすめしません。
大きな病院だと新人理学療法士は勉強会、症例報告会の準備などで22:00帰宅とかも当たり前のようです。こうなると残業代が出れば良いという問題ではありません。新人は定時に帰れるように、管理職の方々は頑張って欲しいです。
負担のかかる動作を減らす:自分が疲れるような治療法を選択していた
理学療法士の仕事は汗をかいてなんぼ💦みたいな風潮がありました。仕事やってる感ありますからね。たまに言われるんですよ「この仕事、疲れそうですね」って。
・患者と密着するような動作
・徒手抵抗の筋力強化
・正座、しゃがむ姿勢で操作すること
も極力行わないようにしています。あとはなるべく靴を脱がないことです。
自分自身がベッドの外側にいたほうが脚の力(または弾性力)を利用できるのでおすすめ。ベッドの上に乗ると意外に疲れるんですよ。
本をたくさん読む:自分の知識と技術に不安があった
新人時代は「リハビリを続けても良くならないですね。」と言われてショックを受けたり、途方に暮れることがありました。仕事への満足度が低いと腰痛になりやすいと言われています。
今は知識と経験から
・リハビリによって良くなる
・自然に良くなる(が時間がかかる)
・リハビリを続けても良くならない
という判断ができるようになってきました。もちろん主治医と相談して治療方針を定期的に見直しています。
むしろ「リハビリを続けて元通りになるほうが珍しい」くらいです。
経験はひたすら積んでいくか、同期や先輩理学療法士の話を聞くと良いです。いまはリハビリでも色々なサイトがあります。
僕は勉強会に行く時間があまり取れないので、オンラインの情報や書籍から知識を入れることが多いです。「理学療法 書籍」で検索してAmazonの売り上げランキングを見るのがおすすめ。
※書籍の選び方は別記事で。
1つだけ紹介するとこれ
運動機能障害症候群のマネジメント理学療法評価・MSIアプローチ・ADL指導
- 作者: Shirley A.Sahrmann,竹井仁,鈴木勝
- 出版社/メーカー: 医歯薬出版
- 発売日: 2005/04/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 1人 クリック: 4回
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腰痛はもちろん他の関節にも適応できる考え方なのでおすすめ。
僕が整形外来リハビリでどのような患者が来ても迷わなくなるまでに8年くらいかかったかも。いまは情報が多いのでそこまでかからないと思います…
腰痛になる条件をチェックする:天気、睡眠不足、骨格も
先程までの要因は自力で対処して大幅に腰痛が改善しました。認知行動療法とも呼ばれています。
さらに腰痛も日によって変動がありました。過去記事で述べていますが、下記のような要因がありました。
・睡眠不足
・寒さや低気圧
・体調不良
・怪我の経験(ヘルニア)
・腰痛になりやすい骨格(歪みではない)
これらは解決しがたい問題ですが、把握しておくだけでも腰痛に対する不安感が減ります。
長くなってしまったのでまとめます
理学療法士(特に新人)の腰痛対策として
・生活習慣を見直す
・身体的、精神的に負担のかかる仕事を避ける
・仕事に対する不安を解消する(誰かに相談する)
・気候や体調によって腰痛が変化するかを把握する
他にもあると思いますが、自分自身の経験を交えて話しました。おそらく何をしても痛まない、腰痛を全くの0にするというのは難しいです。ある種の生活習慣病ととらえ、辛くないレベルまでコントロールしていくのが重要だと思います。
こたつに座っていたら腰に鈍い痛みが出てきたので、寝転んでブログを書き上げました。
次は腹圧について