筋トレとボイトレに力を入れすぎた理学療法士の話

整形外科クリニックの理学療法士(主任)。経験則を交えながら、忙しい社会人向けの筋トレ、ボイトレ、健康法についてお話しします。

「膝が痛くても歩いたほうが良いんですか?」と聞かれたときの答え。一時的に歩行制限する

2019年1月は新たに膝の患者を担当する機会が増えました。

 

今回は「膝が痛くても無理して歩いたほうが良いんですか?」という質問です。

こういった質問、整形外来リハビリの理学療法士ならほぼ100%受けているはず。グルコサミン、コンドロイチン並みのあるあるネタだと思います。

 

整形外来リハビリで非常に多く担当する症例の1つ「変形性膝関節症」

堅っ苦しい定義はあるのですが何らかの刺激により

 

・膝関節表面の軟骨がすり減る

・炎症を起こす

・変形する

 

その結果として痛みが出る、膝の曲げ伸ばしが困難になるなどの症状が現れます。

 

何らかの刺激とは

・肥満

・スポーツ、転倒などの怪我

・使いすぎ

などが考えられます。個人的には関節が圧縮されながら捻(ねじ)れるなどのストレスがかかると悪くなると解釈しています。

さらに関節が変形しやすい体質(遺伝)もあると言われています。

上記の質問に戻ります。

 

膝が痛くても歩いたほうが良いのか?

基本的には歩行などの有酸素運動は推奨されています。

歩行には

・筋力の維持、改善

・有酸素系能力(抗酸化作用)の維持、改善

・血管や血液の状態を良くする(生活習慣病予防)

・骨密度の維持、改善(特に女性)

など様々なメリットがあります。他にもあるはず。

 

筋トレや膝の曲げ伸ばし運動も推奨されています。

 

ただし歩行習慣によって関節変形や痛みがどのように変化するかは明確になっていないのです。

こういった場合は自分なりの立場を明確にしておく必要があります。

 

個人的には

痛みを我慢してまで歩かないほうが良い

と考えています。

様々な患者から同じような質問を受けているのですが「膝が痛くても無理して歩いたほうが良いんですか?」という質問には、隠れている意図があります。

 

歩行習慣を急にやめたら、歩けなくなるのではないか?

こういった不安があることが多いです。

確かに「1日1万歩を毎日続けていた人が、1週間も歩かない」場合は、身体に様々な不具合を生じる可能性があります。

 

つまり僕が「今は無理して歩かないほうが良いですよ。」というのは「無理してでも歩かないと歩けなくなりそう」という患者の強迫観念を論破しなければならないのです。

 

様々な本の解釈と経験則を統合して

歩いたほうが良い、歩かないほうが良いという個人的なクラス分けがあります。整形外来理学療法士の一意見として参考にしていただければと思います。

※エビデンスレベルは最も低いです

 

歩かずに休ませる場合

・夜間の寝返りで中〜強い痛み

・椅子に座って曲げ伸ばしをして中くらいの痛み

・立ち上がる瞬間に強い痛み

・膝を伸ばしていると徐々に痛くなってくる

・ひねったり転倒などの直後

・脚上げ、スクワットが痛くてできない

 

※他にも思いついたら追記します

 

関節、腱、靭帯などの炎症症状があり太もも(大腿部)からふくらはぎ(下腿部)までガッチガチに硬くなっている場合が多いです。無理して曲げると痛がります。 

 

こういった人が無理をすると破滅へのロードを歩むことになります。

手術が必要なレベルの患者を担当すると「痛くても1日1時間のウォーキングを欠かさず行っていた」という話をよく耳にします。こういう方は健康意識も高いので筋力や血液検査の値はバッチリなんですけどね。

 

 

関節、腱、靭帯の炎症症状が強いときに負荷をかけ続けると関節変形が進むと考えています。

変形が進んだら戻ることはありません。

 

僕自身の体験談ですがスクワットのやりすぎで「しゃがんだら自力で立ち上がれないくらい両膝が痛くなった」ことがありました。

そのまま無理をし続けていたので、階段や坂道で膝がミシミシと音がするようになりました。今でも無理をすると膝が痛くなることはあります。

これはもう治りません。

 

自分の担当患者には同じような失敗をして欲しくないと考えています。

 

※ちなみに右肘も腱鞘炎のまま無理していたら肘が伸びなくなりました💦

 

どのように治療、対処するか?

リハビリではまず脚全体の緊張をほぐしてから膝の曲げ伸ばし運動を軽めに行ってみます。これで痛みが緩和すれば万々歳。

痛みがあるうちは「無理して歩かずにセルフマッサージや膝の曲げ伸ばし運動のみ」にしてもらいます。ある程度痛みが取れてくれば少しずつ歩行を再開していきます。

 

どうしても歩きたい場合には歩行補助具を

・杖

・足底板(インソール)

・歩幅を狭くする

などで歩かせて痛みが軽くなるかどうかを確認します。

ただし80代後半でも杖は格好悪いから嫌だと拒否する方も非常に多いです。その場合は

 

こういう山登り(トレッキング)用の杖を勧めることがあります。これだと抵抗感が減るようです。

 

高齢女性でも「脚の使い過ぎ」が多いんです。

朝5時に起きて家事全般行う、広い庭の手入れ、畑仕事、夫の介護などをしつつ1時間のウォーキングをしているという人も普通にいますよ。こういう方は怪我をしても無理して使い続ける場合も。

 

立ち上がりや動き始めだけ痛い場合は歩くこと推奨

 

・立ち上がりの際に膝をガッチリと掴んで立ち上がる

・車から降りたら歩き出す前に一呼吸おく

など膝の痛みを起こさない工夫のほうが必要です。

 

※後ほど思いついたら追記します

 

過剰に運動させないこともリハビリの1つと考えています

 

昔は何でも

姿勢や動作パターンを変えたり、運動させて治すみたいな考え方がありました。

「背中曲がってますよ〜」

「歩き方が悪いですよ〜」みたいな感じ。

 

ここ数年は生活習慣から膝にどの程度負荷がかかっているかを予測して活動量をコントロールするということに重点を置いています。

 

本当はデータ取って発表したいけど時間がないのがもどかしい。