筋トレとボイトレに力を入れすぎた理学療法士の話

整形外科クリニックの理学療法士(主任)。経験則を交えながら、忙しい社会人向けの筋トレ、ボイトレ、健康法についてお話しします。

腰痛の原因と生活指導⑥腰痛ベルト、コルセットについて

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これは筋トレでよく使われるトレーニングベルトです。ジムに行くと色々な人が装着しています。僕が使うのはデッドリフト、スクワットのMAX重量に挑戦するときくらいです。それ以外ではほとんど使うことはありません。

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「コルセットは腰痛に良いのでしょうか?」

と聞かれます。

「普段コルセットを着用していますか?」

と聞き返すと

「寝るとき以外はほどんど着けてます。」

 

季節の変わり目などに急性腰痛(ぎっくり腰)を繰り返してしまう症例を担当したときの会話です。こういう人はよく来院します。ぎっくり腰までいかなくても、動き始めに「ぴきっ」となる危うい気配を感じる人もいます。

辛い腰痛を経験し、再発予防のためにコルセットや腰痛ベルトを常用している人がほとんどです。

 

コルセットが腰痛の発症を抑えるという報告はちらほら

理学療法士なら

・Mindsの腰痛診療ガイドライン

・日本理学療法士協会の背部痛理学療法診療ガイドライン

あたりを参考にすることが多いと思います。

 

腰痛の研究はとにかく多くて調べきれないほどです。様々な介入方法、職種による比較がなされています。

 

・腰痛ベルト、コルセットを装着することにより腰痛の発症を抑えることができた

・比較しても差が無かった

 

という意見があり一定の見解は得られていないです。こういう場合は自分なりに科学的な考察をしつつ立場を明確にしておくことが必要です。「よくわかりません」とはあまり言いたくないんですよね。間違っている可能性もありますが、僕なりの意見を書いておきます。

 

ぎっくり腰を発症したばかりは使う

ぎっくり腰は本当につらいです。発症日、翌日くらいまではミリ単位で動かしても痛いのでコルセットで固定して動ける範囲で動くくらいのほうが良いです。

3日目からは痛みが緩和されてくるので固定を外して少しずつ元の生活に戻していくと良いです。

 

便利なものは何でも上手く使え

後半で述べる過剰な固定によって起こる筋力低下に気を付ければ効果的に使えると思っています。身近なところだと医療職、介護職なら移動移乗用の器具、ロボットなども積極的に使うことをおすすめします。

※取り付けに時間がかかると面倒くさがられることもあります

重量物を持ち上げる際には役立つ

過剰に動いてしまう関節は痛くなるいう考え方があります。コルセットにより前屈姿勢の作業で腰部が曲がりすぎてしまうのを予防できます。腹圧(胸腰筋膜)の代わりをするため、腕や脚の力も入りやすくなります。

ただ前回のブログでも述べた通り、性別や年齢を考慮した耐久力をオーバーしている重さは極力扱わないほうが良いです。

 

重労働の仕事ならある程度の重さになると機械を使うように決められていることが多いのですが、医療職にはあまり浸透していません。

介護、看護、リハビリなどの医療職は腰痛発症率が高いどころか増えています。特に動作に慣れない入職したての頃はリスクが高いのでコルセットや腰痛ベルトで予防しておくのも良いかと。

 

デメリットとしては

腹筋、背筋の低下

これが最も重要なポイントです。固定していれば痛みは出にくいですが、筋力は大幅に低下します。特に安静にするとタイプ1線維(赤筋、遅筋)という持久力のある筋肉が萎縮するため疲れやすくなります。

コルセットは辛い作業の時以外は外すべきだと思います。高齢になるとコルセットを外すとふらつく、歩行や家事動作レベルでも疲れやすくなり、結果的に依存することもしばしば。

あとはデスクワークが中心の仕事であれば全く必要ないです。

 

知覚過敏の症状は変わらないか、悪化すると考えている

ぎっくり腰、ヘルニア、骨折、交通事故、手術などを経験すると腰部の鈍痛(重苦しい感じ)が慢性化することがあります。骨、神経、筋肉、椎間板などの組織は損傷すると修復しても弱い組織になり再損傷しないために過敏になると考えています。そのためぎっくり腰の再発も多くなると思われます。

※調べきれていないので推測です。仮説の域を出ない

 

さらに知覚過敏になると

・天気が悪いと痛い、重苦しい

・寒さ、暑さ、湿気があると痛い、重苦しい

・疲労やストレスがあると腰にくる

・座っているとすぐに疲れる

などがあります。これらは痛みを生じるプロセスが違うため固定をしても良くならないです。それどころか刺激が入らなくなると、より過敏になるのではないかと思われます。

これらに対しては全く別のアプローチをしていく必要があります。

 

椎間板への栄養、物質交換ができない

椎間板には血管がないため、腰を動かした時に起こる拡散によって水分や栄養物質の交換が行われます。これが起こらないと椎間板が変性しやすくなると考えられています。ある程度の圧力をかけることも必要になります。軟骨って面倒くさい組織だなとつくづく思います。

 

考えを整理すると

きつい作業を行うときだけコルセット、腰痛ベルトを着用する。というのが現時点での僕の考え方です。

 

ぎっくり腰の再発をさせなくする方法論があります

冒頭で述べた「ぎっくり腰が毎年恒例のイベントみたいになってしまった」患者を数多く救ってきました。これに関してはかなりの自信があります。

次回述べようと思います。