筋トレとボイトレに力を入れすぎた理学療法士の話

整形外科クリニックの理学療法士(主任)。経験則を交えながら、忙しい社会人向けの筋トレ、ボイトレ、健康法についてお話しします。

腰痛の原因と生活指導⑦再発するぎっくり腰の治療

僕の嫁は育児休暇中に3回ほどぎっくり腰になりました。

初めは真冬のアパートで窓を全開にしてソファーをずらして掃除をしようとしたら

「ぴきっ!」となり

「おうっ!」と声が出て動けなくなりました。

その時はベッドから降りるまでに30分程度かかったようです。僕の職場に電話がかかってきたのは後にも先にもこれ1回でした。2日間はコルセットを装着し、3日後には大幅に改善し普段通りに動けるようになりました。

初めのぎっくり腰から1週間後…

 

「へーっきしぃ!」

 

ぎっくり腰の再発です。膝に手をついて歩くなどの対処をしたため1回目ほどはつらくなかったようです。ただ元通りの生活ができるまでに1週間ほどかかりました。

 

その1か月後の朝…

 

「こ、腰が…」

 

いわゆる寝違えた状態。首の寝違えは経験した方も多いと思います。この時は強い痛みではなかったものの、子供の抱っこなどは苦痛でした。

 

前回記事です↓

www.dorathemute.com

 

これ、僕と嫁が28歳当時の話です。こんな感じでぎっくり腰を再発してしまう方の多くが腰痛に対して恐怖心が強くなり、コルセットを手放せなくなるというのも理解できると思います。

外来リハビリでも既往歴(過去に罹った病気や怪我の経歴)を確認すると高齢者も若い頃からぎっくり腰を繰り返していたということが非常に多いです。

ニーズが多いので腰痛ガイドライン、様々な腰痛関連書籍、セミナーなどで勉強してきました。

 

腰痛治療が功を奏して

「おかげさまで、今年はぎっくり腰にならずに冬を越すことができました」 と言われることも多くなりました。

 

外来リハビリで様々な腰痛を担当しているのですが、今では再発するぎっくり腰をどうにかしたいというニーズ対しては良い結果を出せています

腰痛を0にしたい…とまで言われるとちょっと厳しいです。

 

まずは押さえておきたいポイントとして

ぎっくり腰になると腰周りの組織は弱くなる

サイヤ人は死の淵から蘇ると強くなるのですが、地球人の場合は違います。怪我や手術後は弱い状態で再生します。骨、靭帯、軟骨はもちろん断裂レベルで損傷した筋肉も同様です。反対に筋トレや有酸素運動などの適切な負荷であれば適応して丈夫になるんですよね。これは不思議です。

 

骨折すると骨が丈夫になると思っている方が多いのですが迷信です。初めは骨も弱い状態で再生し、長い時間をかけて元通りの組織に近づきます。ひどい骨折で骨が短縮したり転移(ずれる)した場合には、付着した筋肉が緩んでしまい元通りの力を発揮できなくなります。

 

損傷した組織が知覚過敏になる

このブログで何度も述べているのですが、今までよりも少ない刺激で痛みを感じやすくなります。

・天気や寒さの影響を受けやすい

・疲労、ストレス、睡眠不足による重苦しい感じ

・仕事、家事動作、運転中などに腰が疲れやすい

などの症状が起こります。

 

 

僕が重要だと思うのはこの2点です。治療としては

・腰周りの組織を強くするアプローチ

・知覚過敏に対するアプローチ

を行います。

 

腰周りの組織を強くするために伸張、短縮負荷をかけていく

弱くなった組織は残念ながら元通りにはならないと思っているのですが、ある程度改善することは可能です。

まずはぎっくり腰になって3日目からはコルセットを外し、重量物などのつらい仕事以外には早期に復帰していくことを勧めています。その過程で筋力や柔軟性に問題があればストレッチや筋トレなどのホームエクササイズを指導します。腰痛患者に対して色々な検査をすればほぼ100%何かしらの弱点は見つかります。

 

体操に関しては「腰痛 ストレッチ 筋トレ」などで検索すると色々と出てくるので、少しキツいと思ったものだけに絞って取り入れると効果的です。難しい課題をクリアすると適応した時に身体が良い方向に変わる可能性が高く、簡単なものだと飽きます。

※前屈ストレッチは不安定性を助長する可能性があるためおすすめしません

 

嫁の場合は帝王切開後だったため腹筋が1回もできなくなっているくらい弱っていました。

 

知覚過敏に対してはマッサージなどの物理的な刺激を加える

何度もぎっくり腰を再発している人の腰部、骨盤、臀部などを触診するとほぼ100%シコりみたいな組織(筋肉)を触れることができます。その部分を押すと

・腰が抜けるような不快感

・呼吸が苦しくなるような痛み

・押された部位以外にも拡がるような痛み

あるいは

・他の場所よりも心地良い感じ

などを感じることがあります。これは大抵の場合、左右どちらかにあるので「反対側は全く痛くないです!」と言われます。これを軽めの刺激で時間をかけて摩擦をかけるようなマッサージを行います。しばらくすると上記のような不快感、痛みが緩和されてきます。

 

このような治療を行ったあとにストレッチなどを行うと動作時の痛みも緩和されることが多いです。

自宅でも拳✊やテニスボール🎾などを使って痛い場所を探しつつセルフマッサージを行うと効果的です。3分くらい行うと痛みが緩和されてくるので、そこで終了です。

 

その後嫁のぎっくり腰は再発していません

幸いなことに産休明けで仕事に復帰してからは筋力も戻りました。子供を抱っこする頻度も減ったことも大きいです。

 

治りにくい腰痛も山ほどあります

上記の方法も万能ではなく、あくまで治療の一部です。再発するぎっくり腰に特化したアプローチです。この方法だと起居動作(寝返り、起き上がり、立ち上がり)の痛みにも効果的なこともあります。

 

次回は治りにくい腰痛について。家族の介護を行っている人の腰痛が手強いこと。精神的な部分にも触れていきます。