筋トレとボイトレに力を入れすぎた理学療法士の話

整形外科クリニックの理学療法士(主任)。経験則を交えながら、忙しい社会人向けの筋トレ、ボイトレ、健康法についてお話しします。

頚椎手術後の痛みで「うつ状態」になってしまう患者がいる

2019年9月28日の記事です。

 

ネプチューンの「名倉潤」氏が頚椎椎間板ヘルニア手術の侵襲によるストレスでうつ病になり、2ヶ月間の休養をすることを公表。それに対して様々な意見が出ました。

 

名倉潤さんがうつ病で休養 1年前のヘルニア手術に問題はなかったのか? | 文春オンライン

 

こういった場合、手術に対しての批判的な記事が出ることが多いです。

上記の記事は大変興味深いものですが「手術=悪い」みたいなイメージがつくのは問題だと思いました。

 

僕自身も整形外科の外来リハビリを担当していますが「頚椎の手術後に痛みが生じてしまい、なかなか良くならない」という症状に関しては非常に頭を悩ませています。

※軸性疼痛と呼ばれています

 

さらに「こんなことになるなら、手術しなければ良かった…」という発言も度々聞いています。

 

 

頚椎の手術をする前提として

・肩から手にかけて耐え難いほどの痛み、しびれ

・手足の脱力感(両側同時だとより悪い)

・歩行障害(ふらつき、脚のつっぱり感)

・排尿、排便の障害

などの症状があれば手術を強く勧められます。頚椎が原因で脚にまで影響が出ている場合は、かなり重症です。このような症状を放置しておくと、手術をしても回復する可能性が低くなってしまいます。セカンドオピニオンとして病院を数件回ったとしても手術を勧められるはずです。

 

軽い症状であっても神経を通る「脊柱管」が狭くなっていると

・負担の掛かる姿勢を繰り返してじわじわと進行する

・転倒や交通事故により症状が急激に悪化する

ことがあるため、予防的に手術をすすめられることもあります。手術をするメリットが手術のリスクを上回るかどうか、主治医と良く相談する必要があります。

 

名倉氏の「頚椎椎間板ヘルニア」だと、かなり微妙なラインだと思います。あくまで個人的な意見ですが、手術を検討する前に数ヶ月間休養するのも手だったと思います。

 

「頚椎 手術」で検索すると様々な情報を得ることができます。

 

頚椎手術後の痛みについて

軸性疼痛と呼ばれていて、原因ははっきりと分かっていません。つまり治療法も確立していない状況です。

※手術で筋肉を剥がしたり、骨を削るなどの操作により細胞が変化する可能性が指摘されています

問題なのは画像上では手術は成功しているにも関わらず、痛みや不快感(苦しい感じ)が出てしまい、数ヶ月から数年経過しても良くならないことがあるということです。

 

リハビリでも非常に頭を悩ませているのですが、個人的に行っている治療を紹介します。

 

首から背中にかけてのマッサージ、ストレッチ、体操

頚椎手術をした患者の頸部、背部、鎖骨周りなどはガッチガチに硬くなっています。これは手術直後から数年経過している患者でも認められます。血流を改善することにより、痛みを感じにくくなります。痛みが緩和される場合もあります。

 

セルフならこういったものがおすすめ。

 

猫背姿勢の改善。上を向く、肩甲骨を寄せるように意識する

痛みの原因の1つとして、手術後に筋肉が膨張して組織を圧迫し虚血、酸欠状態になる可能性が考えられています。いわゆる猫背姿勢だと頸部から背部の筋肉により悪い影響を与えます。

※手術によっては上を向く動作が禁忌の場合もあります。その場合は肩甲骨を寄せて上げる、目線だけでも上を向くような練習をします

 

手術前に行っていた活動を再開する

首に悪影響を与えそうなので、怖くて●●が出来なかった。という訴えが多いです。動かし始めは翌日に疲れたり、場合によってはめまいや吐き気を生じる場合があります。それでも「●●をしている間は、痛みを忘れられる」こともあります。うつ状態に対するアプローチとも言えます。

※うつ状態だと痛みに敏感になるため、精神的なケアも必要

 

頚椎に負担のかかる動作は避ける、仕事、家事のオーバーワークは見直す

頚椎ヘルニア、狭窄症などは加齢はもちろん、遺伝的に発症しやすい体質もあると思います。若年者であれば腰椎のヘルニア持ち、高齢者であれば別の関節に炎症や変形がある場合などが考えられます。

 

仕事や家事が原因で頚椎の疾患を発症した場合は、それまでの動作や習慣を見直す必要があります。デスクワーク、重量物を扱う仕事のいずれも長時間労働は避けたほうが良いです。

 

余談ですが、僕の好きな某ビジュアル系バンドのドラマーも頚椎の手術を繰り返し、強い痛みに悩まされています。ヘドバン(頭を振る)はもちろん、楽器の演奏でも負担はかかります。

 

睡眠をできるだけ多く

睡眠不足だと、痛みに敏感になります。とにかく日中でも夜中でも眠い時に、できるだけ多く眠ることを心がけると良いです。

 

良い情報が得られたら追記します。

 

親世代の方々が徐々に不調を訴えることが多くなりました。あと20年後には同級生のリハビリを担当する未来が待ち受けるのだろうか…

 

さらば