筋トレとボイトレに力を入れすぎた理学療法士の話

整形外科クリニックの理学療法士(主任)。経験則を交えながら、忙しい社会人向けの筋トレ、ボイトレ、健康法についてお話しします。

CRPSの理学療法。手関節、足関節外傷後に痛みが引かない症例。刺激を与えて慣れさせる治療

2020年6月の記事

 

過去にこんな記事を書きました。関節が柔らかすぎると痛みが出やすく、慢性化しやすいのではないか?

www.dorathemute.com

 これは、現状でも答えが出せていません。関節が硬くなっている場合は、動きを柔らかくすると痛みも緩和される場合が多いのですが…

 

さらに、整形外科の外来リハビリで厄介な症例があります。それが

CRPS(複合性局所疼痛症候群)という病態

 

小難しい説明が書いてあります。

ja.wikipedia.org

要約すると

・骨折などの外傷後に

・何らかの原因で栄養障害、血行障害を起こし

・痛みが長期間続いている

状態と言えます。僕の担当した症例では

・橈骨遠位端骨折など手関節周囲の骨折

・足関節周囲の骨折

が多いです。

 

手関節、足関節周囲の骨折に関しては固定が終わると主治医から

「もう動かしても大丈夫です」

「松葉杖を外して歩いても大丈夫です」

と言われてそのまま回復していくことが多いです。

 

一部の患者が

・痛みが取れない

・体重をかけると痛い

など痛みが慢性的に続いてしまい、リハビリの指示がでるわけです。松葉杖がいつまで経っても外せない。

もちろん、レントゲン上では問題ないどころか骨折の程度も酷くないことも多いです。

※一般的に骨折のズレが大きいほど、予後が悪くなります

 

こういった患者に話を聞くと…

「固定してしばらくすると痛くなってきた」

と言われることが多く、固定が外れても

「ちょっと動かすと、びりっとした嫌な痛みが出て、使うのが恐ろしい」

「じっとしていても、寝ていても痛みを感じる」

ということがあります。

 

 こういった症例を年間に数件担当するわけですが、1つの結論を見出すことができました。症例発表などをする機会に乏しいので、こちらに残しておきます。

 

 ※明確なエビデンスはなく個人の経験ですが、非常に効果的です

 

痛みに敏感な体質がある

外来リハビリで、こんなことを思うことがあります。

「この患者さん、痛がりな気がする…」

同じような症例でも痛みが強い方の場合、リハビリのプログラムに迷うことがあります。

僕自身も働き始めのころ「痛みを感じやすい人、そうでない人は何が違うんだろう?」と思っていました。

 

これはもともとの気質、体質だと思います。

 

痛みに敏感な人が手関節や足関節周囲の骨折をすると、CRPSという病態に陥りやすいのではないか?と考えました。

神経質でヒステリック(感情的)な場合が多く

・紹介元など別の病院の文句を言う

・少しぶつけたところを、いつまでも気にしている

・皮膚が敏感

・胃腸が弱い

などの共通点もあります。

 

その場合、交感神経が興奮しやすくなり、血管が収縮し、血行障害を起こすのではないか?と考えました。末梢の毛細血管が影響を受けやすいのだと思います。

 

放置していくと痛みが引かないばかりか

・皮膚が青黒くなる

・むくみ(しわがなくなり、表面がつるつる)

・皮膚が萎縮、硬くなる

・反対側と比較すると冷たくなる

 

などの現象が起こります。さて、リハビリを開始すると上記のような状態に加えて

皮膚の表面を触れられるとズキっとした痛み

さらに体重をかけると強烈な痛みを感じることがあります。これをどのように解決するか?が問題なわけです。

 

そこで

痛い場所をマッサージしていき、少し無理してでも体重をかけさせていく

かなり弱い力で皮膚の表面を擦るようにマッサージをしていきます。上手くいくと数分間で痛みが緩和されていきます。

 

そこから関節の動きを出すために反復的なストレッチを行います。

 

そこから手や足に荷重していきます。

電気が走るような痛みを腕全体、または脚全体に感じることがあります。それでも

「少しずつ慣らしていきましょう」と声を掛けつつ反復していきます。

 

上手くいくと少しずつ体重がかけられるようになってきます。リハビリ後に血行が良くなるため、即時的な変化も出せるはず。

 

これを繰り返していきます。注意点としては

リハビリの反動で夜や翌日に痛みが強くなる

ことがあるため

「今日の夜、翌日は強烈な痛みがくる可能性が高いです。ただこれは治療に必要なことなので、痛みが引いてきたら自宅でもマッサージや荷重練習をしてみましょう」

と声かけを入念に行います。これをやらないと信頼関係が崩れ、リハビリに来なくなります。難民になる可能性があります。

 

これ、脱感作(だつかんさ)という感覚を慣らしていく治療法です。これでかなりの症例を改善させることができました。

 

なぜこのような方法を思いついたかというと

運動機能障害症候群のマネジメント理学療法評価・MSIアプローチ・ADL指導

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  • 作者:Shirley A.Sahrmann
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  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
続 運動機能障害症候群のマネジメント頸椎・胸椎・肘・手・膝・足

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  • 作者:Shirley A.Sahrmann
  • 発売日: 2013/05/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

この本のコラムに書いてありました。それを応用してみたわけです。

 

人体は痛みには順応しない。という考え方もありますが痛みを感じる神経にアプローチすることにより改善する可能性もあります。

 

該当する治療者、患者がこのブログを見つけることは難しいかもしれません。

 

いつか様々な方の目につき、役に立てたら嬉しいです。

 

たまには真面目なブログも書いていきます。

 

さらば