筋トレとボイトレに力を入れすぎた理学療法士の話

整形外科クリニックの理学療法士(主任)。経験則を交えながら、忙しい社会人向けの筋トレ、ボイトレ、健康法についてお話しします。

肩関節周囲炎(五十肩)のリハビリ①動かしたほうが良いのか?という質問が多い

2019年10月の記事です。

 

ここ最近の話。親の知人、友人の親、親世代の音楽関係者などが立て続けに心身の不調を訴えるようになりました。皆さん50代以上です。

20年後は友人のリハビリを担当する未来が見える。見えるぞ(白目)

 

以前は腰痛についての記事を書きました。今回は「肩の痛み」について色々と聞かれたので、シリーズ化してみます。

 

肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)について

様々な質問があります。

なぜ四十肩、五十肩?

色々な報告がある中で、40〜59歳の発症が多いようです。僕の担当だと50〜75歳の患者が9割くらいです。高齢者でも発症する人は多く「この年で五十肩とは若返ったか!それとも七十肩か!」というリアクションをする方も。

 

はっきりとした原因は不明ですが

・加齢による組織の変化(脆くなる)

・使いすぎ(歳なのに無理をしすぎた)

・ぶつけた、捻ったなどの古傷

が合わさって発症すると解釈しています。

 

リハビリに来るのは

・痛み

夜眠れない(夜間痛)、動作時痛(物を取る際に痛いなど)

・可動域制限

腕が上がらない、後ろに回らないという症状が多いです

 

自然に治る?

という話を聞いたことがある人が多いです。炎症症状の代表でもある「痛み」は自然経過で取れてきます。その際に拘縮(硬くなる)が無ければ自然治癒と言えます。

肩関節内部の組織的な変化はあっても、症状が無ければ治ったという扱いになります。

 

「痛くは無いんだけど、動かない…」という場合は長引くので是非ともリハビリへ。安全に動かす方法を教えることができます。

 

 

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で、肩関節のリハビリには色々なパターンがあります。十中八九聞かれるのが

 

「これって動かしたほうが良いんですか?」

 

という質問です。

 

これを痛みの重症度でクラス分けして個々にアドバイスをします。

※様々な本や研究から導き出した個人的な見解ですが、効果は出てます

 

まずは

炎症症状が強い場合は積極的に動かさない。スポーツ、きつい仕事は行わない

・安静時にチクチクとした痛み

・肩から肘にかけての痛みを頻繁に生じる

・痛くて夜に眠らない、目が覚めてしまう

・前方の物を取る際に強烈な痛みが出てしまい、うずくまるレベル

・腕を水平に上げると強い痛みのためキープできない

 

などです。こういった場合は医師から痛み止め、注射、湿布などをもらって安静にする必要があります。安静とはスポーツ、重労働は控える、痛みの出る動きはしないということです。全く動かさないと別の問題が生じる可能性があります。

リハビリでも肩まわりのこり症状に由来する痛み、筋肉の緊張、こわばりによる痛みは取ることができます。局所のマッサージ、軽めの体操で症状が緩和されることがあります。

肩甲骨を動かす、可能な範囲でひねる動作などを行う場合もあります。

 

痛みが治りかけの場合は、気を付けながら動かす

・安静時痛は無い

・夜中は眠れるが、痛みのあるほうを下にすると痛くなる

・急に動かすと強い痛みが出る、ゆっくりであれば大丈夫

・後ろに回す動作では強い痛み

・反対側の肩を触れない

などです。この程度であれば、強い痛みを生じない範囲で動かします。インピンジメント(組織の挟み込み)を出すと悪化する可能性があるため注意。

 

個人的な方法としては

肩甲骨周り→ひねる運動→挙上運動

の順番で行うと肩関節、肩甲骨の動きのバランスが良くなり、インピンジメントを起こしにくくなります。上手くいけば1週間〜1ヶ月で明確な違いが出てくると思います。

 

痛みはないけど、動きが悪い場合は積極的に

・安静時痛、夜間痛無し

・急に動かしても痛くはない

・上がりにくいが、痛くはない

という場合は積極的に動かしてみます。

肩甲骨→ひねる動作→少し痛いくらいまで挙上

という流れでリハビリも進めてみます。動かすと痛がる患者は多いです。しかし、炎症が強い時期に安静にしすぎたため、痛みが治ったが硬くなってしまった。ということも多いです。

 

硬くなった組織は刺激に敏感なので、ストレッチをすると「痛っ!」となる場合もあります。が、リハビリ直後から2日後くらいまで痛みがあり、3日目には良くなったというレベルであれば続行。それ以上の場合はプログラム見直しも検討します。

 

一言でまとめると「強い痛みが出ない範囲であれば、繰り返し動作を行って様子を見てみる」というのをおすすめします。

 

病態によって、これをもっと細かくクラス分けできるとリハビリが楽になりそう。

 

次回には制限されやすい動きについて書きます