筋トレとボイトレに力を入れすぎた理学療法士の話

整形外科クリニックの理学療法士(主任)。経験則を交えながら、忙しい社会人向けの筋トレ、ボイトレ、健康法についてお話しします。

腰痛の原因と生活指導④腰曲がりの高齢者と原因

 腰痛のリハビリ場面で

「たまに高齢者でひどく腰が曲がっている人を見かけるのですが、どうしてですか?」

「母親の腰が曲がっているのですが、私もいずれそのようになってしまうのでしょうか?」

こういった質問が結構ありました。原因として考えられるものをいくつか紹介します。

www.dorathemute.com

 

まずは大前提として重要なポイントを。

背筋力の低下のため自力で伸ばすことができない

後述する原因によって起こる背筋力の低下があります。高齢者の場合は筋トレをしても元に戻らない場合も多い。

 

腰を曲げているほうがエネルギーの消費を抑えられる

前回のブログでも述べたように、日常生活では筋肉を使わないような楽な姿勢を取る傾向にあります。腰を曲げてアーチを作ることにより関節を安定させ、筋活動を減らすようになります。

 

腰が曲がっていても痛いとは限らない

関節痛は関節が不安定で動きすぎてしまうから痛いという1つの考え方があります。変形して完全に固まってしまえば痛みは起こりにくくなります。不安定性が残ると痛くなったり治ったりという慢性疼痛が永続的に残る可能性が高くなります。

 

腰椎の圧迫骨折による変形

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背骨に圧力がかかり、耐えられなくなるとひび割れるように骨折します。

・尻もちをつくように転倒

・背中を丸めた状態で重いものを持ち上げる

など強い外力により起こる場合と

・ドスンと椅子に腰掛ける

・前屈姿勢での作業

・咳やくしゃみ

・布団などを持ち上げる

などの腰に負担がかかる動作を繰り返してじわじわとヒビが入る場合もあります。「いつの間にか骨折」とも呼ばれます。

ヒビ程度だとレントゲンにはっきりとは映らないためMRIを撮影して確定診断されることもあります。

 

酷いと骨そのものが潰れてしまい、骨折部が治癒しても元の形には戻りません。骨粗鬆症をベースとした65歳以上の女性に多いです。また骨折部の上下に負荷がかかりやすくなるため別部位の骨折も生じやすくなってしまいます。

※写真の右側部分(関節側)が潰れると不安定になり予後が悪いと言われている

 

見た目でわかるくらいに姿勢が変わります

背骨が曲がるように変形するため、見かけ上は腰が曲がります。立っている時に腰が曲がるとバランスを取るように股関節や膝も曲がります🦵身長を測定すると2〜3cm縮むことがあります。

骨格が変化したり、骨折部周囲の筋肉が変性するため背筋力が低下します。

 

治療、リハビリに関しては書ききれないため後ほど。特殊な筋トレが功を奏することがあります。

椎間板の変性、背骨の変形

いわゆる老化現象です。もともとの骨格、体質もあります。前回のブログで述べたような腰部負担のかかる姿勢を取り続けることにより椎間板というクッションがすり減ることにより背中が丸くなっていきます。おそらく変形する途中に炎症症状が出るため痛みを感じることがあります。

筋力や柔軟性を改善することによりある程度改善する可能性があります。個人的には背伸びとブリッジ運動がおすすめ。

 

筋肉、靭帯の変性

上記の腰椎圧迫骨折、腰部負担をかけ続けることによって背筋や靭帯が緩んだり変性(別の組織に置き換わる)ことがあります。

主な変性として

・筋肉の繊維化…伸びる、縮むのいずれもできなくなる。筋っぽくなる。

・異所性脂肪…筋肉が脂肪組織に置き換わる。霜降りみたいな感じ。

こうなると筋肉は本来の力を発揮できず、自力では背筋を伸ばせなくなります。

 

仰向けになれる方も多い

骨が固まっていなければ仰向けに寝ることができます。自力では背筋を伸ばせないため、太ももを押さえながら背筋を伸ばして歩くような方もいます。

 

リハビリでも完治させることは難しい

「猫背と背骨の出っ張りが気になるのですが、戻りますか?」と聞かれることも多いです。「治りますか?」系の質問は本当に多いです。

「リハビリで色々と試してみますが、完全に元通りにすることは難しいと思います…」と答えます。

高齢者の曲がった腰を元通りにすることは難しいです。腰痛や日常生活上の不便に関してはマッサージ、ストレッチ、筋トレ、有酸素運動など効果的なものはあります。

 

現在は洋式生活によるエコ化、テクノロジーの発達によりきつい仕事が減ってきたため腰が曲がる人は少なくなるのではないかと予想しています。

大事なのは若いうちからの予防だと思います。僕自身もMRIを撮影したら椎間板の変性、ヘルニアがあったのでかなり気をつけています。

 

次回は腰部の耐久力について書きます