筋トレとボイトレに力を入れすぎた理学療法士の話

整形外科クリニックの理学療法士(主任)。経験則を交えながら、忙しい社会人向けの筋トレ、ボイトレ、健康法についてお話しします。

むち打ち損傷の治療⑤MRIの結果は腰椎のヘルニア。理学療法士としての画像に対する知識

2018年7月に交通事故にあいました。11月にMRIを初体験しました。

 

www.dorathemute.com

 

今後は理学療法士の教育でも画像の読み取りが必要になります。2年後の臨床実習では画像についても教える必要があるでしょう。その際に「画像のことは良くわからなくて…」ではダサいです。外来の整形外科リハビリで役立ちそうな知識を紹介します。

 

※難しい文章を僕なりに解釈しています。

MRIは人体に電磁波を当てて輪切りの画像を撮影している

主治医に質問し忘れてしまい、僕のところにこんな質問がきます。

「MRIって人体への影響はどうなんでしょう?被爆の心配があるのですが…」

これに対しては「問題ありません」と即答しましょう。レントゲン、CTとの違いも把握しておくと良いです。

 

MRIは磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging)と言います。ざっくり説明すると人体の水素原子を揺らして戻すまでの時間差を映像化しています。

特に脂肪(T1強調)と水(T2強調)が反応して鮮明に写りますMRIは強力な電磁波を当てているため放射線を当てるレントゲン、CTと違って被曝の心配はないと言われています。電磁波が人体に悪影響があるか…とまで問われると何とも言えません。

ちなみにレントゲンとCTは放射線を人体に照射して吸収率の違いを画像にしたものです。レントゲンは1方向、CTは多方向からの撮影であるためCTのほうが被爆量が多くなります。まずは簡便で人体への影響が少ないレントゲンを行います。レントゲン、CTは脂肪や水が黒くうつるため抽出しにくいです。

 

・レントゲン…2次元画像

・CT…3次元画像

 

と考えるとわかりやすいかも。レントゲン、CTともに人体に影響を与えるレベルではないと言われています。被爆のリスクよりも検査で様々な情報が得られるメリットを優先することになります。他にも様々な違いがあるのですが、これ以上語るとボロが出そうなので「CT MRI 違い」などで検索するとわかりやすいサイトが出てきます。

 

 

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交通事故関連ならMRIでヘルニア、靭帯の損傷、腱の損傷、不全骨折(ひび)があるかを見ることが多い

 

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※フリー素材です。僕のMRI画像もこれとほぼ同じ

上記のとおり、MRIでは骨以外の組織を判断するのに有用なためレントゲンでは特に問題が無い場合でも、交通事故関連で症状が長引いている場合に医師がMRI撮影を依頼します。

症状が長引くと保険会社から理由を聞かれるため画像で何かが写れば治療を続ける、後遺症が残る可能性のある根拠が示せるためです。

 

MRIを撮影したことが逆にマイナスになる場合もあります。加齢による椎間板変性(すり減る、水分が少なくなる)、脊柱管狭窄などの変化がある場合などは「もともと痛みがあったのではないか?」と解釈されることもあり得ます。

 

僕の場合は頸椎は問題なし、腰椎椎間板ヘルニアという診断でした

頸椎は特記事項なしでした。腰椎に関しては第4と第5、第5と第1仙椎にヘルニアがあり、椎間板変性(水分が少ない)もありました。腰の中で最も動きが大きく不安定であり痛みを生じやすい部位です。これが事故の影響かどうかは不明という見解でした。

ちなみに

・中学、高校ではバレーボールを行っていたこと

・新人時代の腰痛

・スポーツジムでのぎっくり腰

もあったためどのタイミングでヘルニアになったかは分かりません。もしかしたら保険会社と揉める可能性があるかも。

上記画像は黒く変性した椎間板が飛び出していることがわかります。僕の画像はその上の椎間板も同じ状態でした。僕の腰椎のほうがちょっとだけ悪いです。

飛び出した椎間板の先が白っぽくなっていれば新しいケガと判断されていた可能性もあります、その場合はかなり強い腰痛を生じていたと思います。

 

交通事故でよくある例では

・頸椎、腰椎椎間板ヘルニア

黒く映る椎間板が飛び出して他の組織に覆い被さるようになります。炎症があるとT2強調(水分を目立たせる)で白く抽出されます。

 

・腱板損傷(肩の筋肉)

横から衝突されたため肩を痛めて挙がらなくなってしまった。という症例を非常に多く担当しています。

本来は黒く写る腱組織炎症があったり断裂していると白く映ります。腱、靭帯は脂肪や水分をほとんど含んでいないため黒く映ります(写らないとも解釈できる)

 

・骨挫傷(レントゲンでは見えない程度のひび)

画像によって、ひびの入った部位が黒く映ったり白く映ったりします。

 

・靭帯損傷(肩、肘、手首、膝、足首など)

靭帯も脂肪や水分をほとんど含まないため黒く映る(何も映らない)はずなのに、炎症や断裂により白く映ります。

 

MRIではっきりと映るレベルの症例は長引くことが多かった

このような場合はリハビリでも炎症を悪化させるレベルの運動は控えます。痛みが引くのを待ちつつ、固まらないように動きを出したり周りの組織の緊張を押さえたりします。

「どうすれば早く治りますか?」と良く聞かれるのですが、強い痛みに関しては主治医と相談しつつ、ある程度は自然経過を待つ必要があります。日常生活や仕事は無理のない範囲で行い、強い痛みを生じる動作は避けることを勧めています。

 

※画像で何も出てこないレベルのむち打ち損傷であれば積極的に動くことを勧めています

本を2冊読むとリハビリで抑えておきたい画像に関する理解が深まります

 ※ここから理学療法士向けの内容

 

おすすめの書籍がこちら。今後は続々と新しい書籍が出てくると思います。総論だけは暗記、後半は太字の部分と自分が担当する症例に関する部分を繰り返し読みます。他はさらっと流すくらいで良いです。

ちなみに脳画像の本も分かりやすいです。

値段が高いので職場の経費で購入し、リハビリスタッフで共有できると良いと思います。交渉してください。