筋トレとボイトレに力を入れすぎた理学療法士の話

整形外科クリニックの理学療法士(主任)。経験則を交えながら、忙しい社会人向けの筋トレ、ボイトレ、健康法についてお話しします。

リハビリでのスクワット動作②茨城在住の高齢者は和式生活、広い庭や畑が多い

外来リハビリでは高齢者が多く

「スクワットが良いとテレビでやっていたのですが、どうでしょうか?」

「膝が悪いんですが、スクワット大丈夫でしょうか?」

と聞かれることが多いです。スクワットは下半身全体を鍛えられることはもちろん、日常生活動作の改善につながりやすいため、非常におすすめです。外来リハビリで下肢(下半身)の筋力低下があると判断したら、ほとんどの場合にスクワットを取り入れています。

 

で、試しにやってもらいます。

骨格や関節の変形などでフォームが崩れることもありますが、なるべく下記の方法で行います。あまり筋肉に効かせることは考えずに、スクワット動作がスムーズに行えるかどうかを見ます。痛みに注意しながらハーフスクワットくらいまで行います。切り返しがうまくいかなそうな方は手すりを使います。

www.dorathemute.com

 

75歳以上高齢者でも8割以上の方はスクワットが可能

あくまで外来リハビリの話です。75歳以上の後期高齢者でもハーフスクワットくらいなら軽々とできます。85歳以上でも手すりなどに掴まれば痛みなくできることも多いです。個人的な経験だと痛みが出るのは歩行、階段昇降のほうが多い。側方への重心移動、ひねる動作で痛みが出る可能性があります。さらに膝が過剰に外向き、内向きになってしまうのも痛みの原因になります。

ニーズとして多いのは…

 

階段昇降、和式生活、庭仕事、家事動作などの膝を深く曲げる動作が大変

僕の住んでいる茨城在住の高齢者は

・和式生活(床からの立ち上がり、しゃがんだ仕事)

・広い庭の手入れを行う(茨城県は家庭の敷地面積が全国1位)

・畑仕事(しゃがんだり、長時間の中腰姿勢)

という特徴がありなるべく痛みを出さずに深く曲げるスクワットに適応できないかどうかを考えます。

※無理ならなるべく洋式生活に切り替えるなどの生活指導を行います

 

スクワットの深さ、速さ、重量を考える

原則としては若年者も高齢者も狙いは同じです。大きな関節角度、素早い切り返し、日常生活よりも大きな負荷を意識します。

トレーニングには「特異性の原則」という厄介者がいます。目的に応じたトレーニングをしないとニーズを満たせないということです。例えば浅い角度でスロースクワットを行うと筋力アップ、筋肥大などの効果は得られます。おそらく筋肥大するだけでも筋の粘弾性が上がるため関節の安定性は改善します。さらに筋持久力が上がるため中腰姿勢での作業も楽になります。

 

しかし

・素早く立ち上がる

・しゃがんだ姿勢から立ち上がる

・重い荷物を持って立ち上がる

・床から立ち上がる(片脚に重心がかかる)

 

には適応できないことも多く、ニーズが満たせない場合もあります。僕の外来リハビリではスローのハーフスクワットが全く問題なければ

 

・フルスクワット

・クイックスクワット

・片脚スクワット

 

の中で安全なものを選んで少しずつ負荷を上げて適応させていきます。うまく行くと生活の質が大幅に改善します。

 

次回はどのような方法で安全性を確認するか、バリエーションを加えるかなど詳しく書きます